画材もプラスチックフリー、ヴィーガン対応を考える
海外には個人商店的に展開している小規模・絵の具メーカーがたくさんあります。「handmade watercolor」などのキーワードで検索するとたくさん出てきます。
先日も面白いブランドを発見して、オーダーし、到着を待っているところです。「使ってみたい!」と思ったのは、そのブランドがプラスチック・フリーを謳っていたからでした。
画材業界においても、環境問題等への取り組みが考えられています。こんなところまで!という驚きがあり、面白かったのでご紹介してみますね。
「動画が英語でわからん」という方はYouTubeの翻訳機能をご利用ください。ちょっと変になっているところもありますが、ざっくりとは理解できます。
歯車マークから「字幕」→「英語(自動生成)」を選んで一回閉じ、再び開くと「自動翻訳」という選択肢が出てくるので、そこで日本語を選びます。
この手が使える動画とそうでない動画があり、デバイスによってもできないこともあります(うちのアレクサでは英語まではいけても自動翻訳は無理でした)。
目次
プラスチック・フリー「Beam Paints」
まずはこちら、Beam Paints のプラスチックフリーが衝撃的だったのでご紹介です。
絵の具のプラスチックといえば、絵の具チューブや固形絵の具のパン(容器)、パレット、水バケツ、筆の軸などがそうです。
私はいわゆる「意識が高い」ほうではないのですが、蜜蝋で作ったワックスクロスをパレットにしたり、固形絵の具の容器にしたり、水バケツにしているのを見て「なんて楽しそうなんだ!!!」と思いました。
使い終わったらパレット布を畳む、というのも最高じゃないですか…環境のために努力する、プラスチックを減らすというよりは、蜜蝋布の道具を使ったら楽しそうということに惹かれました。
「使わない」という否定から入るより、「これかわいい」という肯定が鷲掴みするハートへの力は抜群に強いです。
届くまで時間がありますから、自分でワックスクロスを作ってみて、パレット代わりに使ってみようかな。
プラスチックよりは不便だろうと思うのですが(色が染み付くとか滲み出るとか)、また使ってみて感想をお知らせしますね。
また、これを読んで「このブランドの絵の具を買って試したい!」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
Beam Paints の絵の具について検索してみると、耐光性に問題のある顔料を使った絵の具もあるという調査結果を出しているブログもあります。現在も同じ顔料が使われているかどうかはわかりませんが、この絵の具で描いた絵を販売するとなると問題になるかもなので、前もってお知らせしておきます。気になる方は確かめてからのほうがいいかもしれません。
【追記2024-07-09】
このブログは、2022年以前に購入したBeam Paintsの絵の具に使用されている顔料の中に耐光性の低いものが含まれることを指摘していました(ブランド側がアーティストグレードを謳っていたため)。その際のブランド側の対応がよくなかったようで、憤慨されていました。その後Beam Paintsのほうで改良があり、現在の全カラーが彼女へ提供され、耐光性の弱い顔料を変更したことが告げられて、和解されたようです。
顔料の毒性と廃棄方法への配慮
中世ヨーロッパなど、教会の天井に絵を描いている際に絵の具が目に入ったりして失明すると行った話を、小さい頃に歴史マンガ本で読んだことがあります。
上記のBeam Paintsの代表、アノン氏の両親はアーティストで、お父様がご自身で絵の具も作られる方だったそうですが、早くにお亡くなりになっています。血中には多くの重金属が認められたそうで、伝統的な魚食のせいでもあると思うが、絵の具の顔料のためでもあるだろうと話されています。そのため、アノン氏は安全な顔料についても配慮して絵の具を作られています。
ご自身が妊娠中にとても絵が描きたくなり、毒性のない材料やヘンプオイルで油絵の具を作り、絵を描いておられたようです。
重金属などの毒性の高い成分を含む顔料というのは、普通に今も存在していますが(鉛、カドミウムなど)、メーカーによりきちんと記載されており、実際には人体に影響が出るほどの有害性はないそうです。
また、東京では下水処理が行われるため、ご家庭で排出される程度の少量の色水であればそのまま流して大丈夫とされています。多量になる場合は布などに染み込ませて燃えるゴミとして処理します。(自治体によって違うかもなので、お住まいの場所でご確認ください)
絵の具の毒性について詳しく解説・まとめられている「水彩絵具使ってみたドットコム(日本語)」の記事 がありますので、気になる方はぜひ一度こちらを御覧ください。
色水から顔料を取り除いて排水する努力をされているのも見たことがあります。
これもやり方が見ているのが楽しくて何回も見たくなるので、自分用メモのためにもこちらに掲載しておきます。
この投稿をInstagramで見る
廃棄水をためておいて、チョークの粉を使って沈殿させているそうです。
絵を描く人の動画で大きなバケツが出てくる場合は、その人も同じようにされているかもしれないですね。
この投稿につけられている文章を読むと「猫砂を使って廃棄している人もいる」と書かれていあります。それは簡単そうです。犬のペットシーツでもいいかも。
私たちが小学生だった頃には全然記憶がありませんが、今では小学校の図工の時間でも、パレットに残った絵の具を拭き取ってから洗うといった努力をされているところもあるそうです。
私はスケッチに水筆を使っているので、普段は廃棄する水が出ません。
実はこの水彩の廃棄水を流すのが小さい頃から嫌いで、罪悪感を感じるんですよね。
大きめの絵を描く際や野外にイーゼルを立てて描く際には、多少の廃棄水が出ますが、正直なところ、あまり描かないので機会が少なく、策を講じていないのが現状です。
しかしこのままでは気が重くなって描かなくなるので、心置きなくできるようにどういう方法を取るのかは要検討です。
ヴィーガンフレンドリーの画材
…ヴィーガンの人はそんなことまで気になるのか…そりゃそうか…なんて私は意識が低いんだ…と思いました笑。
日本では食生活にしてもヴィーガンフレンドリーが進んでいるわけではなく、まだあまり語られていないと思いますので、紹介しておきますー。
ヴィーガンが避けたい素材で、絵の具に使われているものとしては、はちみつ、オックスゴール(界面活性剤・牛の胆汁)、動物の骨(アイボリーブラックの色などは骨を焼いた灰だそう)などがあるようです。
有名どころでは、セヌリエははちみつを使っています。シュミンケとウィンザー&ニュートン、ラウニーはオックスゴールを使っています。
ダヴィンチ、ホルベイン、レンブラント、ダニエルスミスとQORはヴィーガンフレンドリーだそうです。また、下記に紹介する動画によりますと、シュミンケはプログレードより学生用の絵の具の場合には大丈夫と話されていますね。
この動画を作られた方はヴィーガンでもベジタリアンでもないそうなのですが、この方の住んでいるアメリカでの飼育環境の悪すぎる牛となにかの肉は食べないようにしていると動画内で話されていました。
また、筆にしてもリスや豚、馬などの毛が使われているものは避けて、シンセティックのほうを選ばれます。
でも、ナイロン(=プラスチック製品)なんだよなぁ…。私の好きな水筆も、プラスチック系になりますね。
紙もヴィーガンフレンドリーとそうでないものがあるそうで、水への耐久性を得るために動物性ゼラチンで作られた接着剤によりサイズ調整がされているものがあるそうです。
サウンダース・ウォーターフォードとアルシュはそのようにされているそうで、ファブリアーノのすべての紙、キャンソン・ヘリテイジ、ストーンヘンジ・アクアがヴィーガンフレンドリーだそうです。
上記動画と こちらの記事を参考に、国内で手に入れやすいものを挙げました。年数が経って、また変化があるかもしれません。
環境問題に関係するのは衣食住のことだけと思ってしまって、画材までもその範疇だと、イメージがつながってなかったので新鮮でした。
これらの人たちのアイデアはめちゃくちゃ面白いんですよね。
センスよく楽しくなるんだったら、ぜひ手にとってみたいと思っています。
ハンドメイド水彩絵具をいくつかご紹介
まったくイメージがないと、想像もしづらいかと思いますので、いくつかのブランドをご紹介してみますね。
Greanleaf & Blueberry
私は最初ここを発見して、ハンドメイド絵の具の世界を知りました。私もこちらのスケッチャーズセットを持っています。普通の絵の具よりは色がくすんだ感じになります。
私が発見した当初は発売すると即完売で手に入りませんでしたが、今は再販頻度も増えて、やや安定供給されるようになりました。
メルマガの顔料研究なども面白いです。こちらも伝統的な原材料と製法で作られた絵の具を提供しています。天然石原材料も、もちろんあります。
TINY CLOUDS
いつか欲しいかもと思っていた絵の具ブランド、女の子がひとりでやってそう。
かわいい、キラキラ、ラメラメ、ふんわりファンタジーな色の組み合わせのパレットが得意。インスタのほうが雰囲気が伝わるので、そちらのリンクをつけておきます。
パレットセットで受注生産していたので、予約期間を待てば必ず手に入れられるかなという感じでした。
A. Gallo
昔の絵を写す等の研究から、10年ほど前より伝統的な原材料と制作方法をもちいて絵の具を作るようになったブランドだそうです。
結構目にする、老舗ハンドメイド絵の具ブランドじゃないかな、「手作り絵具ガチ勢」という言葉がぴったり。
the ART of SOIL
土から絵の具を作ることにこだわりを持って作られています。小さな丸い絵の具チップを、さまざまにデザインされたパレットで提供されています。
雪山登山スケッチをされているアーティストの方が愛用されているとのことで、知りました。ネイチャー。
インスタを見ていると、こちらを使って描く絵はアーシーな感じの色味で仕上がると思われます。
ハンドメイド絵の具は国内でも販売されていますが、セットというよりは「遊色がおもしろい」「ラメが入っている」などの特殊な色を制作して1色ずつ販売しているのがメインストリームっぽいです。BOOTHにて検索できました。
作ってみたくなったら、自分でやってみるのも面白いかもですね~。