「忘年筆」「新年筆」にスーベレーンを買ったら、大変な感じになっていった話
ホワイトストライプ を今更なのですが、いやーー…気になりだしたら止まらない、というお話です。
スーベレーン のことを細かく見ていく話ってあまり見つけられなかったので、書いてみようかと思いました。
私の購入の決め手のひとつ「物欲タロット」や、ペンケースについても少し触れてみました。
目次
「忘年筆」「新年筆」とは
万年筆マニアの中ではおなじみとなった言葉、「忘年筆」と「新年筆」。
私が初めてその言葉を知ったのは、日本橋高島屋のカリスマ万年筆店員ntさんがTwitterでつぶやかれていたのを見た時でした。
万年筆業界に伝わる秘伝書によると、古来より新年明けて間もない時期に「新年筆」と称して万年筆を買い求め、一年の無病息災を祈念したという故事が転じて、現在の新年会の形になったそうです。
2019年の新年筆は、ぜひ当店にお任せください。— ntさん@日本橋の万年筆屋さん (@enu_tea) 2019年1月3日
これは今年の新年筆についてのntさんのつぶやきですが、忘年筆も似たような感じの内容だったような気がします(もちろん冗談ですよ!笑)。
「万年筆なんて1本あれば十分でしょ!」という言葉を言われまくっているので、こういうことを言い出して毎年購入しようと(売りつけようと)するんですね。
ちなみに「万年筆のカリスマ店員て、どゆこと?」と思われますよね、彼はセーラーの社員さんで、日々売り場に立たれているのですが(現在はセーラーの関係会社に所属、全国のお店様で万年筆出張販売イベント「出張!ntさん」を開催)、Twitterの人気のあまり、彼がプロデュースするオリジナル万年筆がセーラーから販売され、すぐに完売してしまうという人気ぶりなのです。
なぜペリカンの万年筆なのか
ntさんに申し訳ないのですが、セーラーではなく、ペリカンの万年筆を買ったんですよね。
万年筆愛好家が必ず持っているといっても過言ではない、書きやすい万年筆の代名詞、ペリカンのスーベレーン。愛好家の中でも「モンブラン派か、ペリカン派か」と二分されるくらいの人気です。
そのペリカンが、時折限定カラー商品を発売します。2018年はターコイズホワイトが発売され、その爽やかな佇まいにすさまじい人気が出ました。ホワイトストライプ発売時より盛り上がったと思います。ちなみに2015年はピンクでした。
私は慢性の「ペリカンのブルーブラックが使いたい」病です。インク自体は他の万年筆でも使用できますが、普段愛用しているキャップレスには強く非推奨なインクです。万年筆とインクは同メーカーに揃えるのが一番でもあります。だったらと、スーベレーンシリーズの中では一番どストライクに好みだったホワイトストライプの在庫がまだあるうちに探しはじめました。
個人的に、日本語の書き味はプラチナの#3776シリーズのほうが良いんじゃないかと思いますが、ペリカン万年筆は筆跡がいいんです。あとで見返した時に、味わいがあります。これも「買ってみよう」と思った大きな理由のひとつです。
【追記】
筆跡がいいのは初めて買ったペリカン万年筆、ホワイトトートイスだったのですが、ペン先調整できる方に見てもらったら「ちょっと変わったペン先をしている」と言われました。偶然出会った個体だったようです。
その万年筆には黒インクを入れて使うのが好きです。
ペリカンのブルーブラックは危険なインク!?
ペリカンのブルーブラックは没食子(もっしょくし)インクという、インク中の鉄イオンが酸化することで色が変わり、紙に定着して水に流れにくくなるインクです。青いインクが時間をかけて黒(グレー)へと変化します。
昔はモンブランやラミーからも販売されていましたが、現在は製造されていません。廃棄の問題が難しいのだそうです。新しいところではプラチナからその特性を逆手に売りにした、没食子インクのシリーズを新たに発売しました。
プラチナ公式サイトより
さてペリカンのブルーブラックですが。
上下ともに書いた直後ですが、下はインク自体がすでに酸化していたようで、はじめからこんな色でした。
本来は時間が経つと上の色から、下の色になります。
私はこの色の変化が大好きで、度々このインクが使いたくなり、キャップレスに入れては周りの先輩方に止められていました。
没食子インクは鉄を酸化させる=錆を発生させて、ペン先や万年筆のパーツを傷める可能性があるインクです。昨今のスチールペン(ペン先がスチール製のもの)は出来が良いので、そうそう錆びないとも言われていますが、やっぱり危険。キャップレスなんて、ペン先が18金でも(没食子インクは金ペンなら大丈夫)内部機構パーツが金ではありませんから、ペン先がうまく出し入れできなくなってしまう可能性があります。
ちなみに、ペリカンのブルーブラックとパイロットのブルーブラックインクの間を、いったりきたりしています。あの鮮やかな青も好きで、恋しくなります。
箱の中で万年筆が踊ってるよ?
万年筆購入は通販だったのですが、届いた時、中でかつかつ音がしました。変だなと思って開封すると、なんとキャップがあいてペン先が出ており、軸自体も固定されておらず、箱の内側に衝突し放題という状態でした。
購入店にはクレームを入れ、伊東屋に走ってペンケアルームでペン先の状態を見てもらいましたが、ペン先はダメージがなく、なかなかの良品なので返品しないほうがいいと教えてもらいました。輸送の衝撃によるものではなく、先天的にペン先が開きめのもののようで、その場で詰めてもらいました。
また、ペリカンのスーベレーンはキャップのねじ切りが浅く、おそらく輸送中の振動で回って外れてしまったのだろうということでした。ペリカンあるあるのひとつのようでした。
かといってあまりきつく締めるとキャップが割れやすくなるので、「発送されたお店側も強くは締めなかったのではないか。普段使用する際も、適度な力で締めてくださいね」と教えてもらいました。
キャップが外れていた原因もわかり、本当に助かりました。
でもああいう状態で届くかな(笑)。なかなかですよね。
スーベレーンのストライプはまっすぐでないものもある
「ボールペンだけど忘年筆にするぞ」と年末に、こちらも売っているうちに万年筆とお揃いするため、入手することにしました。まだあちこちで在庫は見かけますが、国内販売数は万年筆が1600本だったのに対し、ボールペンは500本と少ないんですね。
この時もそれほど気負わず通販で購入しましたら、送られてきたものはストライプがねじれていました。安くはない買い物なので、お願いして返品させてもらいました。
その後、ストライプがまっすぐなものを実店舗で見つけて購入。しかし自分では触れない内部機構にわりと大きめの黒い異物が2箇所、付着しているのを発見。クリップを回さないと見えないところにあり、購入時には「中の機構の色かな?」くらいに思っていて、気づけませんでした。接着剤の残りに何かがくっついたっぽい感じでした。
別店とはいえさすがに二度目、あんまりなので、こちらも修理か交換をお願いしてみましたが、交換できる在庫はなく、修理もどうなるかわからないのでと返品となりました。
限定品でただでさえ数が少ないのに、私は我慢できない人なんだよなぁ…と落ち込みます。
次は絶対に決める!完璧な一本を探す!!とどんどん神経質になっていき、できる限りストライプがまっすぐなものを目指しているうちに年末時期に突入。帰省先の大阪でも数件のお店を回りましたが、在庫がないところがほとんどでした。
このボールペンを忘年筆にすることはできませんでした。
年が明け、東京に戻って文具店めぐりをするも、どこもストライプは斜めになっているか、何かしらの汚れ(接着剤の跡のように感じます)がついていたりと、心惹かれる一本に出会えません。そのうち、ストライプの継ぎ目と、その位置まで気になりだし、どんどん判断できなくなって「こんなことでは、もう買えないんじゃないか」と思うようになりました。限定物は旬のうちに買わなきゃですね。身に沁みました。
そんな時に、一軒、忘れている文具店を思い出しました。家から一番近くにある、代官山蔦屋の万年筆売り場です。しかもこのお店は夜中の2時までやってます。
すでに21時を回っていましたが、電話すると3本の在庫があるとのことで、すぐ見に行ってみました。その時心惹かれたのが「ストライプがまっすぐな一本」と「どこが継ぎ目だかわからない一本」でした。後者はややストライプが斜めっているものの、気にならない程度でしたし、何より継ぎ目がすばらしく美しいので「これだ!」と決めて購入しました。
青い鳥は身近にいたのです(キリッ)。
真ん中の縞に切り目みたいなのが、ちょっと見えますよね。そこです。拡大してやっとわかる継ぎ目、すばらしい職人技。
これを見ているだけでご飯がおかわりできそうです。
そんなこんなで、こちらが新年筆になりました。
ペリカン・スーベレーンの私的・見分けポイントまとめ
実物購入の際に「ここを押さえておけば大丈夫」というポイントをまとめました。神経質な人向けです(笑)。万年筆界隈の先輩方に聞いたら、もっとあるかもしれません。
- ストライプの出具合、まっすぐか、模様はどうか
- ストライプのつなぎ目の美しさ
- ストライプのつなぎ目の位置
- ストライプの下にゴミは入っていないか
- キャップの閉まり具合
- ペン先の玉の揃い(左右バランスが悪いことが多いそうです)
- 書き味・筆跡
今回私は「ペリカンの筆跡が好き」ということもあって購入したのですが、ペン先バランスが左右ばらついている(既に持っている)ホワイトトートイスのほうが、筆跡が好みでした。
上記のことが整っていても、理想的かどうかは別だったりするので、試筆をさせてもらうことは大切かと思います。できれば自分がいつも書くのと同じ紙を持って行って、書かせてもらうと良いかと思います。
ペン先の玉の揃いはルーペがないとわからないかな・・・これは店頭で自分で確認するのは難しいかもしれませんから、お店の方に確認してもらうと良いかも。大型店舗だと万年筆専門のスタッフの方は、ルーペは持ってるんじゃないかなーーどうだろう。石の仕入れならルーペを持って行くんですけどね~(笑)。
万年筆のほうは、ストライプのつなぎ目まではこだわりませんでした。在庫があっただけでもありがたかったです。ペンケアルームで褒められたから、もう良いのです。
物の購入って、それにまつわるストーリーが一番心に響きますね。だから店員さんって素晴らしい仕事だと思います。
購入に迷ったら、迷わなくても「物欲タロット」
物を購入する際、必ずタロットを引いています。…というと、「そんなことに使っているのか」と言われる(あきれられる)ことが多いですが(笑)、これを「物欲タロット」と呼んでいます。
様々な店舗で「買ってもいいんじゃない?」なホワイトストライプを何本も見かけました。
「ここが手のうちどろこか…買うか」と思ったら必ずタロットを引いていました。しかしどこのどれも、いまひとつな結果でした。まったく良い反応が出ず、なかなか珍しい状況でした。
なぜなんだろう…と焦り落胆しましたが、今思えば、各店の閉店時間まで歩き回らせ(ペンに対してはいいカードは出ないものの、他店を見に行くことは大賛成される)、蔦屋しか開いてない夜の時間にひっぱるためのような展開でした。物欲タロット、頼りになります。オススメです。
外で買い物をする際にも、少し躊躇したり、二つの品のどちらにするかを迷ったら、iPhoneのタロットアプリで確認しています。
カウンターに万年筆を並べてくださった店員さんに「…ちょっと頭を冷やして店内一周してきます。」と言い残し、離れて隠れて、タロットを引くんですね(笑)。
アプリのタロットって当たるの?と思われるでしょうけれど、「信頼を深めたアプリ」なら大丈夫です。タロットデッキを実際に回す時も、デッキと私の信頼が深まっていないと答えがはっきり受け取れないのですが、アプリも同じです。
私が使っていたのはステラ薫子さんのタロットアプリでしたが、今はこちらは配信がなく、私自身もスマホ買い替え時に消えてしまいました…残念。別のものを探し中です。
あとはタロットデッキを実際に使っての展開もします。加勢先生が教えている「二択タロット」というスプレッドがありまして、それで「買ったら、買わなかったら、それぞれ自分はどうなるか」という二つの未来についてを俯瞰します。
iPhoneアプリで判断するときも、加勢先生のメソッドで読んでいます。アプリはカードを引くだけで、アプリについている解説はほとんど読んでいません。下記リンク先のスクールで習得できます[PR]。
代官山蔦屋を思い出すまでは、とにかく「つるされた男」が出ていました。身動きが取れないカードです。「手を出すなよ!」と止めていたんでしょう。
この「物欲タロット」については、また別の機会に詳しくまとめたいと思います。
<追記:2022-04-21>物欲タロット、こちらにまとめております。
やっと揃った2本を収めるペンケース
クアトロガッツさんの2本差しペンケース、ずっと欲しくて、やっと購入しました。
「素」というヌメ革のシリーズで、まだ日光浴中です。きれいに日焼けしたら、この忘年筆・新年筆をさして使いたいと思っています。
そのうちナガサワ文具センターのキップレザー・ペンケースも使ってみたいと思っています。
万年筆は手帳に差す物だからとペンケースが二の次になってまして、まだ持ってないんですよ。
それでは皆さんも、ぜひ新年筆をお楽しみください~。